「30秒ドローイング」というイラスト練習法をご存じですか?
30秒ドローイングは短時間でドローイングを繰り返すことで絵が上手くなるという練習方法です。
しかし「効果があった」「意味がない」と様々な意見があるので「本当に30秒ドローイングって効果があるんだろうか」と感じている方も多いと思います。
自も30秒ドローイングをやってみたのですが、結論を先に言うと30秒ドローイングだけやっても初心者のイラスト上達にはあまり役に立たないと思います。
この記事では30秒ドローイングの効果や意味がない理由について説明しています。
30秒ドローイングについて気になっている方や30秒ドローイングをやっているんだけどいまいち効果を感じていない方はぜひご覧ください。
30秒ドローイングとは
30秒ドローイングは30秒で切り替わる画像や3DCGモデルを次々に描いていく練習方法です。
描く対象は特に決まっていませんが、人体クロッキーに使われることが多いです。
30秒という短時間でクロッキーすることで、人体の特徴を大きく捉えて少ない線で描くことを目的としています。
30秒ドローイングで練習するサイトとしては「ポーズマニアックス」という3DCGのサイトが有名でしたがサイトが閉鎖してしまいました。
現在は有志の方が作った「Pose Trainer」というサイトで似たような30秒ドローイングができるようになっています。
30秒ドローイングで右脳が活性化する?
もともと30秒ドローイングは「脳の右側で描け」という美術教師が描いた本の中で紹介されている練習方法の1つです。
右脳と左脳で役割が違うというのを聞いたことがあるかたも多いのではないでしょうか。
- 右脳:イメージ、創造を司る
- 左脳:論理的な思考を司る
イメージをつかさどる右脳を優位にすることでがうまくなるので、右脳を使うトレーニングをしましょうというわけです。
ちなみにわたしは左利きですが、左利きに天才が多いといわれているのも右脳が優勢になるからだといわれています。
ただし左利きでも、遺伝的な左利きは右脳と左脳の役割が逆になるのであまり意味がないなど、色々な説があるようです。
30秒ドローイングは、複雑な視覚情報を高速に表示することで、強制的に脳の言語機能をオーバーヒートさせて、イメージを司る右脳が優位の状態することができる練習法といわれています。
ただし現代では、右脳と左脳で役割をきっちりと分かれているわけではないという意見が大半で、右脳を鍛えれば絵が上手くなるという話はかなり怪しくなっています。
この本の初版は1981年とかなり古いので右脳を鍛えれば絵がうまくなるという話はあまり信用しないほうがいいと個人的には思っています。
30秒ドローイングの効果
- 絵を描く前の準備運動になる
- やる気をだすためにやる
- 絵を描くことを習慣化できる
絵を描く前の準備運動になる
30秒ドローイングは短時間でできるので、絵を描く前の手慣らしとして効果的です。
絵は目で見たものを脳で受け止めて手で出力して描きます。
手や腕を連動させて動かすという意味では絵を描くのは一種のスポーツと考えることもできます。
頭のイメージが固まっていても手が自分の思うように動かせないと絵はうまくかけません。
描き始めはあまり線がうまく引けなかったのが、描いているうちにうまく線が引けるようになった経験はないでしょうか。
絵を描くことは運動なので、最初のうちは手が慣れていなくて思うように描けないことがあります。
運動前にストレッチや準備運動をするように30秒ドローイングをして手慣らしをしておくと本番で描きやすくなります。
やる気をだすためにやる
30秒ドローイングは絵を描くやる気がでないときにやるのもおすすめです。
人は「何かをやり始めるとやる気がでてくる」という習性があります。
勉強や仕事のやる気がでなくても、少しだけやり始めるとなんだかやる気がでてきた経験はないでしょうか?
絵やイラストの練習も同じです。
- なんだか今日はイラストを描く気がしない
- やる気がでない
そんなときはまず30秒ドローイングをして気軽に取り組み始めるのがおすすめです。
30秒ドローイングをやってやる気がでれば絵を描けばいいですし、やる気がでなければやめればいいだけです。
30秒だけなので「やる気がでれば儲けもの」くらいに考えて気軽にやってみるのがおすすめです。
絵を描くことを習慣化できる
短い時間でできる30秒ドローイングは、絵を描くことを習慣化するのに向いています。
絵やイラストを描きたいと思っているけど長続きしないという方はまずは30秒ドローイングからはじめてみてはどうでしょうか。
人間は2週間続ければ習慣化できるといわれています。
30秒ドローイングを生活の中に組み込んでまずは2週間続ければ、自然と毎日絵を描けるようになるでしょう。
30秒ドローイングが意味ない理由
次に30秒ドローイングが「意味ない」といわれる理由について説明していきます。
- 30秒は時間が短すぎる
- 形がとれるようにはならない
30秒は時間が短すぎる
30秒ドローイングが意味ないといわれている理由の1つは「描く時間が短すぎる」ためです。
人の体はかなり複雑なのでしっかりと観察して描くには30秒では時間がまったく足りません。
「絵はすぐにうまくならない」という本に短時間クロッキーについて書いてあるページがありますが「プロでも2、3分のクロッキーは難しい」といっています。
本の著者の成冨ミヲリさんは藝大卒業後に様々なコンテンツ制作の現場を経験した後独立し、現在はプロ向けのデッサンスクールを開いているガチの方です。
この方は描くのがとても速いそうですが、それでも30秒や1分で描けるのは外郭だけで、しかも描いたことのあるものしか描けないそうです。
プロでも難しいのに初心者が手を出してもうまくいくわけがないですよね。
時間が少ないと対象をあまり観察できないので、自分の持っている知識や経験を元に手癖だけで描いてしまいがちです。
手癖で書いた場合、人体の構造を理解している元々絵が上手い人が描けばそれなりに形になりますが、イラストを描き始めた初心者が描いても雑なものができるだけでまったく描けるようにはなりません。
ソースは自分です。
形がとれるようにはならない
30秒ドローイングは時間が非常に短いので人体を細かく描くことができません。
そのため少ない線で描くためにおおまかな「全体のシルエットを取ることが大事」ということが理解できます。
ただし大まかに全体のシルエットをとることが大事ということが理解できるだけで、実際に形をとれるようになるわけではありません。
短時間クロッキーを繰り返してもさっと形がとれるようにはなりません。
元の形をじっくり描いて知ったほうがよっぽど速く描けるようになります。
「絵はすぐに上手くならない」より
「速く描けるようになりたい」「形をうまくとりたい」と考えているなら、30秒ドローイングよりもデッサンや模写、もう少し長めの時間をとったクロッキーのほうが効果的です。
ちなみにこのような短時間クロッキーを1年独学で続けた方がどうにもならずに学校にやってきたことがあります。
形が合っていないものを雑に描いているだけで、そのクセを取るのに1年かかりました。
くれぐれも何のためにやるのか分からないうちは手を出さないでください。
「絵はすぐに上手くならない」より
デッサンをやったことある方はまず一番最初に全体の大きなアタリを取ると思います。
30秒ドローイングはその最初のアタリを取る作業をひたすらやるようなものだと考えてください。
結論:30秒ドローイングだけでは絵はうまくならない
- 絵を描く前の準備運動に向いている
- 絵を描く習慣化の手助けになる
- 形がとれるようになるわけではない
「30秒ドローイングを〇〇日続けたら続けたら絵がうまくなった」という話も聞きますが、経験上30秒ドローイングだけやっても絵はうまくはならないという結論です(経験不足なだけかもしれませんが)。
30秒ドローイングで絵がうまくなったという人は、30秒ドローイング以外にも色々な練習したから上手くなっただけでしょう。
「30秒ドローイングを続けていたら右脳が覚醒して画力がめちゃくちゃ上がって何でも描けるようになる」といった奇跡は起こらないのであまり過度な期待しないようにしましょう。
また30秒ドローイングは大まかな形をみる練習にはなるかもしれませんが、形自体がうまくとれるようにはなりません。
デッサンでなんとなくアタリが取れても最後のキワの処理ができないと形がゆがむのと同じです。
形を覚えるためにやるなら30秒ドローイングをしているなら効果は薄いので、もう少し長めの時間を使ったクロッキーや模写、デッサンなどしっかりと観察しながら描ける練習をするのがおすすめです。
個人的にはクロッキーは最初は2分くらい時間があった方がいいんじゃないかと思います。
どれくらいの時間を設定するかはクロッキーをどれくらい描き込むのかや描く人の画力でも変わってくると思います。
あまり効果がないと言いましたが、30秒ドローイングは短い時間で気軽にできるのが最大のメリットです。
絵を書く前の準備運動や、あまりやる気がでないときの取っ掛かりとして気軽に挑戦できるのは良い点です。
30秒ドローイングに限らずイラスト練習は「どういった効果があるのか」しっかりと考えてからやったほうが上達が速いと思います。
「30秒ドローイングを続けているけどあまり効果が感じられないなぁ」と思っている人は、少し長めのクロッキーや別の練習方法も試してみてはどうでしょうか。
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